巻頭言
        挑戦する気概


                 校 長  樫尾 尚樹
 4月、ここ角館は町中に桜が咲き、沸き立っている。多くの人々が雪国の春を謳歌し、人も自然も冬に蓄積した生命のエネルギーを一気に解放するかのようだ。秋田人は粘り強いと言われるが、冬の厳しい寒さと豪雪は確かに人の心も強くする。
 角館高校は今年210名の新入生を迎え、650名の生徒が平成29年度の学校生活をスタートさせた。1年生は未知なる高校生活への希望に胸膨らませ、2年生は新しい進路コースで自分の夢を追う。そして、3年生は来たるべき受験・就職試験という、立ちふさがる最大の壁を乗り越えるために心を研ぎ澄ます。全ての生徒諸君がこれからの高校生活において、目指す進路目標に挑戦し、自分の人生を切り開いてもらいたいと強く願う。
 様々な経験をしてきた年長者として君達に伝えたいことがある。「挑戦しても願いが必ず叶うとは言い難い。しかし挑戦しなければ見ることができない景色がある。挑戦しなければ新しい自分に出会うことはできない。」今、心に誓って欲しいのは、目指す目標が困難なものであっても、常に挑戦する気概をもって高校時代を送って欲しいと言うことだ。
私自身、今までの人生を振り返った時、若き日の悔いが残る事ばかりが思い出される。中学時代、部活動の最後の大会で、あの球に勇気を持ってとびつき捕っていたら。学生時代、指導教官にもっと自分がやりたい研究テーマについて本気で伝えていたら。教員となって間もない頃、担任する生徒の進路指導でもっと内面に深く入り込んで指導をしていたら等々。そういった後悔の念は決して忘れないものだ。そんな時、尊敬する先輩からのこんな言葉をもらった。「人は全力で挑戦した事がたとえ失敗に終わったとしても後悔はしないものだ。勇気を持って挑戦しなかったことに対して人は怒り、悔いるのだ。」
私達は、弱い自分を認めたくない時、失敗して惨めな思いをしたくない時、格好悪くて人に笑われそうな時、自分自身が本当にしたい事や言いたい事を飲み込んでしまうことが往々にしてある。しかし、先の言葉との出会いから、私は日々のちょっとした事にも後悔するくせに、一生に何度あるかわからない「挑戦」しなければならない時には、絶対に後悔をしたくないと考えるようになった。人生は一度しか経験することはできないし、自分の人生は自分の意思で選びたいと考えるようになった。未来に生きる生徒諸君はこれからの学校生活やその先の人生において、多くの勝負すべき機会に出会うであろう。しかし、どんな時でも目標から目を背けず、怯まず、恐れず、力を尽くして全力で挑戦して欲しいと思う。挑戦する壁が高ければ高いほど、堅固であれば堅固であるほど、越えられないもどかしさで悩み苦しむかもしれない。しかし、それを乗り越えた時こそ、最高の喜びとこれからの長い人生を生き抜く自信が得られるはずだ。
 桜は花の時期を終えると、緑の葉を茂らせる。そして来年の春の花を準備し、長い眠りに入る。来年の春に桜の目を覚ますのは冬の厳しい寒さである。生徒諸君にもこの青春の苦しさつらさに耐え、自分の目指す進路目標に向かって、失敗を恐れず全力で挑戦して欲しい。そして、桜が厳しい寒さで花開くように、来たるべきそれぞれの春には、自分自身の花を満開に咲かせて欲しい。
 最後に、私の好きな詩を贈ろう。

心に太陽を持て
嵐がふこうと 吹雪がこようと
天には黒雲 地には争いが絶えなかろうと
いつも心に太陽を持て

    くちびるには歌を持て
    軽く、ほがらかに
    自分のつとめ 自分のくらしに
    よしや苦労が絶えなかろうと
    いつも、くちびるに歌を持て

    苦しんでいる人 悩んでいる人には
    こう、励ましてやろう
   「勇気を失うな くちびるに歌を持て 心に太陽を持て」
 
  ドイツの詩人 ツェーザル・フライシュレン(訳・山本有三)









      角館高等学校校長挨拶 

 「歴史と伝統の町」角館は、三方を小高い山々に囲まれた仙北平野の北端に位置し、西は檜木内川、南には玉川が流れる城下町で、みちのくの小京都と呼ばれています。檜木内川の堤にはソメイヨシノの並木が2Kmにわたって続き、春には清流を背景に、多くの人々に美しい姿を見せてくれます。
 このようなすばらしい環境に恵まれた地に建つ本校は、大正14年開校の旧制秋田県立角館中学校を前身とする角館高等学校と、昭和3年開校の秋田県立角館高等女学校を前身とする角館南高等学校が平成26年に統合し、新生「角館高等学校」として誕生しました。今、4年目の春を迎えましたが、二つの学校の長い伝統の上に、新たなる歴史が始まりました。そこには質実剛健の「若杉精神」と、清く賢く強く生き抜く「駒草精神」の理念が継承され、本校教職員、生徒の精神的基盤となっています。
本校の目指す教育は、「郷土を愛し、国際社会や地域社会に貢献できる人材の育成」であります。今年度は、次の重点目標を掲げます。

1.生命を尊重するとともに、相手の立場に立って物事を考えるこ とができる豊かな心を育成する。
2.生徒自らが進路実現のために主体的に学び、高い目標に向かって挑戦し続ける意欲を喚起する。
3.学校の教育活動について積極的に発信し、保護者や地域社会との連携を強化する。

 今年度新たに、全日制課程210名、定時制課程9名の新入生を迎え、平成29年度の角館高等学校の船出が始まりました。生徒達は、目指す進路目標に向けて熱心に勉学に励む一方、9割以上が部活動に所属し日々活動しており、文武両道を目標に頑張っています。
 我が角館高等学校は「生徒の夢を叶える学校でありたい」と思います。保護者の皆様や、同窓会、地域の方々のご支援をいただきながら教職員一同、一丸となって、角館高等学校のより一層の躍進に向け邁進したいと考えております。ご支援よろしくお願いいたします。

平成29年4月6日
校 長  樫尾 尚樹